【入門編】BCP担当者必見!BCPとは?にプロが答えます!

皆さんの会社を思い浮かべてください。
もし、予期せぬ災害が起きたら、会社はどうなるでしょうか?
もし、その災害が数日間、数週間も続いたとしたら…もし、それが自分たちだけだとしたら…
そんな時、会社として一番困ることはなんでしょうか。
万が一、被災したら会社の何からどのように復旧しなければならないのでしょうか。

今回は皆様が自社でBCPを策定出来るようになることを最終目標として、

【入門編】BCPの概要
【上級編】BCPの策定方法

と入門・上級の2回に渡ってBCPについてご紹介します。

入門である本記事では、BCPの概要や必要性に注目して、まずはBCPとは何か、なぜ必要なのかを理解していただける内容になっています。

突然上司にBCP策定を頼まれたけど、そもそもBCPって何?自分で作れるものなの?とお困りの方、自社のリスクを削減したいとお考えの方、ぜひ本記事を参考にして下さい!

1.BCPとは

まず初めに、BCP(事業継続計画)とはどういうものなのでしょうか。

1-1.持続継続の概要

内閣府から平成17年8月30日に公表された「事業継続ガイドライン」では、

事業継続計画(Business Continuity Plan、BCP)

大地震等の自然災害、感染症のまん延、テロ等の事件、大事故、サプライチェーン(供給網)の途絶、突発的な経営環境の変化など不測の事態が発生しても、重要な事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い期間で復旧させるための方針、体制、手順等を示した計画のこと。

と説明されています。

つまり、BCPは自社の倒産リスクを減らす活動の一環であります。
BCP策定とはいつ来るか分からない災害や非常事態に、会社としてどう備え、どう対応するかを決めることです。BCPは自社にとって望ましくない事態に陥った際に、会社としての損害を最小限に抑えることを目的としています。

もしあなたが非常事態に見舞われた時に、何を優先して復旧するべきか、また得意先や一緒に仕事をしていた企業への対応はどうするべきかなど、考える余裕は中々ないと思います。後悔してからでは遅いため、事前のうちに準備をしておくことはとても大切なことです。

対策を事前に立てている企業とそうでない企業では、圧倒的な差が生まれてしまうのです。

1-2.BCPの必要性

では、どうしてBCPを作る必要があるのか、考えていきましょう。

先ほども述べたように企業というものは何かしらの事業目的や理念を持っており、事業目的や理念は企業にとって最重要な要素です。

その事業目的や理念を実現するために、業務を行っており、業務は作業、処理から構成されます。また、作業、処理の中では、設備、人、情報などの経営資源が用いられます。

企業に脅威を与える事象として、地震、風水害、パンデミック、近年ではオリンピックによる人の集中などが挙げられますが、これらの事象が直接損害を与えるのは経営資源です。

経営資源が損害を受けると、作業、処理に障害が発生し、業務に支障が生じるため、最終的には特定の商品、サービスの提供ができなくなる、特定の地域、顧客への対応が滞るといった形で影響が出ることになります。

これらの脅威から企業を守るために、経営資源を資産として守るための事前対策、作業、処理の停止を最小限にして企業の機能を維持させるための初期初動対策、業務を継続させて価値を生み出し続けるための継続・復旧対策があり、それらがBCP基本方針に基づいて体系的に構成されているのがBCPです。

1-3.防災対策との違い

災害や非常事態に備えると聞くと、企業の防災対策と同じではないかと思われがちですが、違います。防災対策は、自然災害に備えて、自社の人命や現物を守るための対策になります。一方BCPは、自然災害に限らずあらゆる非常事態から、現物を守るのではなく事業の継続性を守るための対策です。そこには当然社員の人命救助も含まれています。

自社を脅かす非常事態は2つに分けられます。

<外的リスク>

自然災害、人災、テロ、新型インフルエンザや感染症、取引先の倒産 など

例 東日本大震災の場合

  • 直接被害:東日本大震災の時に復旧が遅れ、顧客が離れていった→廃業または事業縮小へ
  • 関節被害:取引先、親会社が被災→サプライチェーンの影響などもあり倒産、二次被害

<内的リスク>

自社の不祥事、重要人物の損失 など

また防災対策は事前対策BCPは事後対策と言われています。

その理由として防災対策は自社の現物資産の損失を最小限にするために事前に備えることで、BCPは失った後の被害を最小限に抑えるための事後の行動を示すからです。

1-4.メリット・デメリット

BCPを策定することで得られるメリットはたくさんあります。

<メリット>

  • 緊急時に早期復旧に向けて素早い対応がとれる
  • 取引先の信頼が高まる
  • 業務の重要度、優先度が見える
  • 会社の強み・弱みが見える

<デメリット>

  • コストがかかる(他社に委託する場合)
  • 時間がかかる(自社で策定する場合)

このように、メリット・デメリットを比べた際に、BCP策定のメリットは非常に大きいと言われています。

2.事業継続取組みの歴史

事業継続の取組みにはどのような歴史や経緯があるのか、政府の研究会や各省庁の法令やガイドラインを例に振り返ってみましょう。

2-1.BCP政策ガイドライン

まず、平成14年に経済産業省のBCP策定ガイドラインには

  • BCP は、サプライチェーンを構成する企業全体で経営効率を追求する経営管理手法であり「在庫や仕掛品の削減」、「生産や供給のリードタイムの削減」などの実現につながるもの
  • 一方で、BCPの導入は、サプライチェーンを構成する一企業にボトルネックがあれば構成企業全体に影響を与える可能性を有する。つまり、サプライチェーンを構成する一企業の事業中断が、他の企業の事業中断へと波及するそれゆえに自企業だけで BCP を構築するのではなくサプライチェーンを構成する全企業でBCP を構築する必要があり、こうした考え方の浸透する欧米のグローバル企業から、サプライチェーンを構築する企業に対してBCPの策定や適用を求められるケースも見られる

と記されています。

当時、輸出企業および海外に事業展開する企業は、諸外国の取引先から要望される形で事業継続計画(BCP)の策定に着手したと言えます。

このように取引先、特に重要顧客からの要望で事業継続計画(BCP)の策定を進めるケースは、現在も続いています。

平成17年に中央防災会議より首都直下地震対策が発表され、マグニチュード7クラスの地震が今後30年以内に発生する確率は70%程度と見込まれ、地震の切迫性を訴えました。想定される震度分布では、東京湾岸を中心に都心部では震度6強6弱となり、震度6弱以上の区域が都県を越えて広域に分布すると予想されました。

同年に中央防災会議で検討されてきた内容に基づき、内閣府より事業継続計画(BCP)の普及促進のため「事業継続ガイドライン(第一版)」が公表されました。

その後、平成21年に「事業継続ガイドライン」の改定版第二版が公表され、事業継続の取組みが有効なビジネスリスクを対象にし、震災発生後の目標復旧時間と目標復旧レベルの重要性を明示しました。

翌年に中央防災会議より予防から応急、復旧、復興までの対策マスタープランといえる首都直下地震対策大綱が発表されました。防災に対する国民運動として「自助」「共助」「公助」の活動を推進し社会全体での減災を目指しました。

震災から2年経った平成24年に東京都は独自に新たな地震被害想定を発表し、発生が予想される大地震に向けた取り組みをスタートしています。

2-2.災害対策基本法

また平成25年6月に「災害対策基本法」の一部が改正・施行されました。

ご存知の通り、災害対策基本法は我が国の災害対策の要となる法律で、関連する行政や地方行政・公共機関への指定は幅広く文字通り基本となるものです。

一部改訂の概要は以下の参考資料のように、大規模広域な災害に対する即応力の強化、住民等の円滑かつ安全な避難の確保、被災者保護対策の改善を目的としていますが、特に注目するのが平素からの防災への取組みの強化です。

新たに加わった7条2項の条文には、

  • 災害応急対策等に関する事業者について、災害時に必要な事業活動の継続に努めることを責務とするとともに、国及び地方公共団体と民間事業者との協定締結を促進すること

と明記されています。

このように災害応急対策に従事する事業者(企業・組織)は、災害時において「事業継続」が求められているのです。今までは、災害に備えて事業継続計画(BCP)を策定すべきです、策定しましょう、という状態から、法律で事業を継続しなければならない事になりました。

これらのことから、企業経営者はBCPの重要性を理解し、事業継続に取り組まなければならないと考えています。

次にご紹介するのが、平成17年8月に内閣府から公開された「事業継続ガイドライン」です。

平成22年に第二版が公表され、その後の国際的な災害や動向を踏まえ事業継続計画(BCP)から平時の事業継続マネジメント(BCM)への企業の意識転換と、BCP策定後の実効性の向上を目指し、特に運用に関する内容を充実させて第三版として作成されました。

後半の上級編の記事では、この事業継続ガイドラインを参考にしてBCPの策定手順を紹介します。

3.まとめ

今回は入門編として、BCPとは何か、その必要性とメリットについてみなさまに知って頂きました。BCPの策定には時間の労力を有するので、BCP策定専門のコンサルティング企業に委託することも1つの手ではあります。

しかし、当然コストがかかるため、自社でBCPを策定したいという方は、上級編である「【上級編】自分で作るBCP!策定手順大公開」をご覧ください。実際に策定まで至らなくても、今回の記事でBCPの必要性や効果を知ったことで、経営者としてレベルアップしたこと間違いなしです!

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