生産管理と品質管理~「質」と「納期・原価」を両立するシステム

品質管理は製品・サービスの品質を、一定水準(主に顧客要求に耐えうる水準)に保ち、継続的な改善を促す業務です。製造業では、生産管理業務の中の一項目として考えられることが多いでしょう。また、一般的に、「品質」と「納期・原価」はトレードオフの関係にあるといわれます。そこで、この記事では生産管理と品質管理の関係性を整理しながら、製品の「質」と「納期・原価」を両立させる仕組みを紹介します。

1.生産管理と品質管理の関係性

まず、製造業において、品質管理がどういった位置づけにあるかを確認しておきましょう。

1-1.生産管理と品質管理

生産管理業務は「品質」「原価」「納期」を管理し、適切な数量を生産することが主な目的です。また、購買管理、在庫管理、生産計画、工程管理、需要予測、品質管理など業務範囲が広いことでも知られています。品質管理は生産管理の一分野であり、「顧客の要求を満たした製品を生み出すための手段」と位置付けられるでしょう。

1-2.品質管理の役割

品質管理の主な役割は「製品の品質を維持すること」です。常にコスト削減の圧力がある中で、いかに顧客の要求に見合うような「質」を維持できるかが焦点になります。

1-3.製造業における品質管理の種類

製造業における品質管理では、以下3種類の品質を意識して業務が進められます。

  1. 使用品質(要求品質)…顧客から求められる品質
  2. 設計品質…目標とする品質のことで、使用品質をもとに設計品質を決める
  3. 製造品質…実際に製造された製品の品質

1-4.品質管理の効果

上記3つの品質に配慮した品質管理を行うことで、製品の出来栄えを一定の範囲内に収めることができます。要は「バラツキをできるだけ抑えつつ、顧客の要求を満たす製品を出荷できる」わけです。

2.品質管理の主な工程

このように品質管理では、「顧客の要求⇒要求をベースにした設計⇒実際の品質(出来栄え)」の順で品質管理が行われます。この中で特に重要なのは、「実際の品質(出来栄え)」です。最終的に出荷される製品の質が高く、均一であるほど、顧客の要求を満たしやすくなるでしょう。したがって、常に「製造品質」を高める努力が求められます。

製造品質を高める3つの管理

具体的には、以下のような工程を通じ、製造品質の向上を図ることになります。

2-1.工程管理

  • 作業手順の標準化
  • 品質教育や作業訓練
  • 設備の維持管理
  • 工程を正常に保つ管理

2-2.品質検証

  • 製品品質の検査
  • 工程能力の監視
  • 管理状態の監視

2-3.品質改善

  • 基準に適合しない製品の再発防止策立案

いずれの工程でも、「追跡、チェック」といった要素が欠かせません。つまり、製造品質の向上には、生産工程にある製品を追跡し、不良の原因を追究する仕組みが必要なのです。ただし、こういった仕組みを成立させるには、多大なコストがかかります。品質管理は、コストと質をバランスさせることが役割ですから、効率化は必須と言って良いでしょう。つまり、専用のシステムと機能によって効率的に業務を進める必要があるのです。

3.品質管理を効率化するシステム

品質管理業務を効率的に進めるためには「不良分析」「トレーサビリティ」を自動化できる機能が必要です。

3-1.不良分析(不良実績収集)

不良分析は、不良品の発生を防ぐため、生産工程ごとに不良品を検査する作業です。仮に不良品が発生した場合は、その原因究明を行い、再発防止策の立案を行います。不良品が発生した原因を追究するには、「不良内容の分布」を確認できる機能が必要です。不良品の分布から、どこに不良品が偏っていて、どの点を改善すべきなのかを把握するわけです。

3-2.トレーサビリティ

トレーサビリティとは、原材料の仕入れ、生産工程、流通経路を記録し、追跡できる状態に整えることです。トレーサビリティを確保することで、不良品が発生した場合の影響範囲を特定できるようになります。また、スムーズな不良品回収と再発防止にも役立てられるでしょう。さらに、「いつ・どこで・誰が・どの工程で・どの材料や機械を使って」不良品を生産したかが把握できるようになります。

3-3.不良分析とトレーサビリティを備えたシステム

このように不良分析やトレーサビリティは、品質管理で重要な「追跡、チェック」を強化し、製造品質を高める効果があります。したがって、不良分析やトレーサビリティを機能として備えたシステムの導入がおすすめです。一般的には、生産管理システムの一機能として搭載されていることが多いでしょう。例えば、次のようなソリューションです。

●GLOVIA smart PRONES

中堅製造業向けのERPであり、生産管理システムです。生産管理システムを中心に、基幹業務全体をカバーできる機能を持っています。システム稼働後に蓄積されたデータをリアルタイムに可視化する「ダッシュボードオプション」により、以下の不良実績の確認が可能です。

【ダッシュボードで確認できる不良発生率】

  • 仕入不良発生率
  • 製造不良発生率

さらに、原材料の受け入れから製品の出荷にいたるまでの在庫情報をデータベースの中で管理し、原材料と中間品の使用実績・品質実績を連動して管理できます。これは、トレーサビリティ情報のスムーズな確認に繋がります。

●TECH-S

個別受注型に特化した製造業向けの生産管理システムです。こちらも、生産管理の一機能として、不良実績収集機能やトレーサビリティが搭載されています。

生産管理システム導入時の注意点

製造業向けの生産管理システムは、さまざまなベンダーからリリースされています。今回紹介した不良分析やトレーサビリティも、決して珍しい機能ではありません。それだけに、導入ベンダーの実績やノウハウには注目すべきです。現場業務への理解・業務知識の不足したベンダーが導入を進めてしまうと、現場の混乱を招くばかりか、業務効率の低下を招きかねません。また、単一のソリューションに依存せず、マルチベンダー対応やカスタマイズ調整が可能なベンダーかもチェックしておきましょう。マルチベンダー対応やカスタマイズ調整によって、より使い勝手が良いシステムの構築が可能になるからです。

4.まとめ

この記事では、製造業の品質管理について、生産管理業務との関連性やその工程、必要な機能などを解説してきました。製造品質を高めることは、顧客からの信頼性や安定した需要につながります。ただし、それを徹底するには多大な労力が必要なため、システム化を推進すべき分野ともいえます。製造品質を効率よく高めるため、品質管理機能を持ったシステムを扱うベンダーへの問い合わせを検討してみてはいかがでしょうか。

メニュー