正確な在庫管理によるロス削減とトレーサビリティの実現方法とは?

厳しい競争環境が続く製造業にとってコスト削減は重要な課題です。これは、在庫管理においても例外ではありません。無駄なロスを発生させないなど、正確な在庫管理がますます重要になっているといえるでしょう。

一方で安心、安全といった観点からは製品に不良品が発生した場合に素早く回収したり、原因を突き止めたりすることが求められています。このような課題を解決する手段の1つとしてロット管理があります。今回はロットを使った在庫管理について解説します。

1. 在庫管理で企業が抱える課題

在庫を多く保有していれば、急な受注にも対応できるでしょう。しかし、在庫が過剰であれば、時間の経過とともに材料や製品が劣化したり、倉庫や管理費用が増加したりといった問 題が発生します。

また、在庫管理における課題はそれだけではありません。有効期限切れの製品を誤って取引先に納品してしまう、製品に回収が必要な不具合が発生してもどの製品を回収すべきかわからないといった会社の信用に関わる問題もあります。

いずれの問題も工場内の情報を見える化し、トレーサビリティを改善することが重要です。

2. 生産管理の基本〜ロット管理とは何か?〜

一般的に工場においてはロット管理を行っている企業が多いのではないでしょうか。ロットとは材料を購入したり、製品を製造したりする最小の単位のことを示しています。ロット管理ではロットに番号を付与し、材料の購入から製品の製造、出荷までを管理します。

それでは、最小の単位である1ロットとは何個のことを指すのでしょう。ロットというと 、1ダース12個と同じであると勘違いしてしまう人もいるかもしれません。ロット単位は工場によって異なります。例えば、10個を1ロットとする工場もあれば、100個を1ロットとすることもあります 。工場の状況に応じてロットの最小単位は決定されます。

3. ロット管理の目的

ロット管理をする最大の目的は工場内のどこに、何が、どれくらいあるのか見える化し、トレーサビリティを向上するところにあります。材料の購入や製品の製造を個別の台帳で管理していたのでは、トレーサビリティを向上することは難しいでしょう。材料を購入して倉庫 に格納する入庫ロット、倉庫から材料を取り出す出庫ロット、材料を投入して消費する消費ロットなどを統合管理することでトレーサビリティの向上は実現します。

4. ロット管理でトレーサビリティを向上させるメリット

そもそもロット管理をするとどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、ロット管理でトレーサビリティを向上させるメリットを3つご紹介します。

4-1. 製品をトレースして不良品発生原因の特定が容易に

ロット管理をしていると生産単位ごとにロット番号が付与されているため、不具合が発生している可能性が高い製品群を瞬時に発見することができます。また、不良品に使用された材料をトレースすることもでき、不具合発生原因の追求にも役立つでしょう。

また、不良品から材料をトレースすることはもちろん、材料がどの製品に使われたのか逆方 向にトレースすることも可能です。これにより、消費期限が過ぎていたなど材料に問題があった場合も、該当する材料が使われた製品をすぐに特定することができます。

このように万一、不良品が発生した場合も素早く対処ができるようになるため、顧客からの安心感や信頼感につながるでしょう。

4-2. ロット単位に情報を付加して製造日付などの管理が可能に

間違って有効期限切れの製品を出荷してしまったり、材料や製品を長期間保有することで品質が劣化してしまったりということはありませんか。ロット管理ではロット番号に製造日付、使用された材料情報、消費期限などの情報を付加して管理することもできます。

これにより消費期限が迫っている材料や製品の有無を確認でき、ロスが減少することが期待できます。また、古い製品を出荷することもなくなり、顧客からの信頼を損ねることもなくなるでしょう。

4-3. ロット単位に正確な在庫の管理が可能に

在庫管理でもっとも重要なことは正確な在庫数を把握することです。せっかくの生産計画も在庫情報が信頼できなければ、成り立たちません。ロット管理では製品や材料の入出庫をロット単位で管理し、どこに何があるかを正確に把握することができるようになります。

また、ロットごとに在庫管理をするメリットは他にもあります。製品によってはロットごとに僅かに性能差がある場合があります。そのため業界によってはロット番号まで指定された注文を受けることもあるそうです。ロットで正確な在庫数を把握することで、このようなお客様の要望にも応えることができるようになります。

5. ロット管理を生産管理システムで実現

ロット管理のメリットを享受するためには紙の台帳やExcelを使用していては難しいでしょう。それではどうすればよいのでしょうか。

5-1. 生産管理システムがロット管理をサポート

ロット管理でトレーサビリティを向上させるためには材料の購入や消費、製品の製造や出荷 を個別にExcelや紙台帳で管理していたのでは難しいでしょう。

これら個別の台帳を連携させて、ロット管理を行うためには生産管理システムが有効です。生産管理システムにはロット単位に情報を管理したり、製造された製品から使用された材料をトレースしたりする機能も備えています。

5-2. 生産管理システムは安価な製品・サービスもある

生産管理システムを導入するというと費用面が心配だという方もいるでしょう。しかし、今やクラウドサービスで安価な生産管理システムも提供されているので活用を検討してみる価値はあります。

ただし、生産管理システムを価格だけで選び、導入を決定してはいけません 。自社の製造現場にはどのようなシステムが合うか、そのシステムを導入することで目的を達成することができるのかを慎重に検討するようにしましょう。

例えシステムの導入費用が高くとも、結果として、安いものを導入するよりも良い結果となることもあります。


6. 成功の秘訣は現場の協力

生産管理システムさえ導入すれば、適切にロット管理を行い、トレーサビリティを向上できる訳ではありません。生産管理システムが効果を発揮するためには、現場の協力が必要不可欠です。

生産管理システムを導入してもシステムに情報を入力しなかったり、システムを利用しなかったりと現場がうまく活用できなければ意味がありません。すでに生産管理システムを導入している企業のなかでも、生産管理システムを伝票発行や調達にしか活用できていない企業も少なくありません。生産管理システムを導入する目的や操作方法を事前にしっかりと現場に説明しておきましょう。

7. まとめ

今回はロット管理について、解説しました。ロット管理をすることで、トレーサビリティを改善し、正確な在庫管理や工場内の状況把握を実現することが期待できます。しかし、ロット管理を紙やExcelの管理台帳で運用していたのではトレーサビリティを改善することは困難です。トレーサビリティを改善するためには、生産管理システムの導入を検討することも考えた方がよいでしょう。

ただし、生産管理システムも現場で活用されなければその効果を発揮することはできません 。そのためにも現場に導入の意味をしっかりと説明し、システムが活用されるように促進することも忘れずに行っていく必要があるでしょう。

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