生産管理で重要な在庫管理の基本

「在庫がどこにあるかわからない」、「在庫が過剰で廃棄が必要になってしまった」というような事例は多くの企業で発生しています。このように在庫管理に課題を抱えている企業は実は少なくありません。在庫管理が不正確であれば、過剰在庫による製品や材料のロスや、在庫の不足による受注機会の喪失につながるばかりか、生産計画も絵に描いた餅になってしまいます。

この記事では当たり前だけど忘れがちな在庫管理のポイントについてご説明いたします。

1. 管理する在庫の種類

まず、在庫といわれて、何を想像するでしょうか。会社には在庫として、材料だけではなく、製品や仕掛品、さらに、業務で必要となる物品などの貯蔵品があります。 これら在庫は多くあればよいというわけではありません。在庫が多いと保管する場所や管理するための費用が必要となってしまいます。しかし、在庫が少な過ぎるのも問題です。在庫が少なければ、生産や納品に支障をきたし、顧客満足度の低下や受注機会の喪失につながる恐れがあるからです。

2. 在庫管理のポイント

在庫管理に課題を抱えている会社では、基本的なことがおろそかになっていることが少なくありません。ここでは、在庫管理の基本的なポイントについてご紹介します。

2-1. 適正在庫の明確化

もし適正在庫を把握できていなければ、今、在庫を過剰に持ちすぎているのか、それとも在庫が不足しているのか判断することはできないでしょう。まずは過去の販売実績などから、おおよそ自社で必要となる在庫数を把握することが大切です。さらに、各月や季節の需要変動も織り込むことができれば、より正確な適正在庫数を把握することができるようになります。

2-2. 在庫数量や格納場所の情報の見える化

在庫が今、どこに、何個格納されているのかわからないという企業も少なくないのではないでしょうか。このような場合、入出庫の記録をつけ、常に在庫をトレースできるようにしましょう。多くの場合、WMSと呼ばれる倉庫在庫や倉庫業務のマネジメントシステムを使ってこれらを管理します。

2-3. 倉庫内の整理整頓

工場や倉庫内で在庫が至るところに散らばっていては、在庫をトレースできるようにした意味がありません。在庫管理の第一歩は整理整頓です。

しかし、せっかく一度整理整頓を行ってもそのままにしておけば、時間の経過と共に以前と同じ状況になってしまうことでしょう。常に整理整頓された状態を保つためには、製品、材料、仕掛品などの保管場所やルールを決めて運用することが大切です。

当たり前のように聞こえるかと思いますが、この基本的なことができていない企業も少なくありません。業務改善コンサルタントを雇い、業務とシステムを一気に改善するのも手です。

2-4. 定期的な棚卸しの実施

在庫がどこに、どのくらいあるのかといったことをシステムや台帳などで管理していたとしても、システムや台帳の情報と実際の在庫数に齟齬でてしまうことも少なくありません。定期的に棚卸しを行うことで、情報と実際の在庫が一致するか確認するようにしましょう。

棚卸しは労力が高い作業ですから、棚卸し業者に外注しても良いでしょう。システム入力までしっかりサポートしてくれます。

2-5. 材料や製品の過不足警告

突然、在庫が不足するとお客様への納品に支障をきたしてしまいます。このように必要な在庫数が確保できていなかったり、逆に在庫が多すぎたりした場合には在庫数を調整する必要があります。

在庫を調整するかためには、材料や製品が「不足している」、「過剰である」といったことを知らせる仕組み作りが必要です。

例えば、今までの傾向から数ヶ月先の需要を予測し、材料の過不足を明らかにするといった需要予測です。このような需要予測をうまく活用できれば、無駄な在庫を削減して、適正な在庫数を確保できるようになるでしょう。このような機能は、生産管理システムに含まれています。

2-6. 作業の標準化

皆がばらばらの作業手順で倉庫への入庫や出庫、出荷などの作業を行っていれば正確な在庫管理ができなくなってしまいます。例えば、納品する製品の1つに不良品が見つかったため、勝手に倉庫から新たに製品を1つ持ち出したらどうでしょうか。ルールが定められ、きちんと運用されていなければ正確な在庫管理は難しいでしょう。よって、最初に業務の標準化から始める必要があります。繰り返しになりますが、業務改善コンサルタントを活用するのも手です。

3. 在庫管理精度向上の正の循環を回す

適正在庫がわかっていなかったり、在庫が見える化できていなければ、必要以上に在庫を保有したり、逆に在庫が不足するといった事態が発生するでしょう。さらに在庫を過剰に抱えれば、整理ができず、余計にどこに何が分からなくなるかもしれません。まさに負のサイクルです。

まずは適正在庫の明確化と在庫状況の見える化を進め、在庫数量の適正化を図りましょう。さらに、実績状況から適正在庫を見直すといった正のサイクルを回すことで在庫管理の精度は向上していくことが期待できます。まずは現場で負のサイクルを立ちきり、正のサイクルを回すことが重要です。

4. システム?Excel?在庫管理には何のツールを使うべきか?

複数の材料や製品、仕掛品を管理する必要がある現代の工場において、在庫を紙台帳だけで管理するというのは困難でしょう。ここでは在庫管理を支援するツールやシステムについてご説明します。

4-1. Excel

システム導入やクラウドサービスの利用はハードルが高いため、使いなれているExcelで管理したいという人もいるでしょう。

Excelであれば、マクロや関数などを組み合わせ、自分自身で簡単な在庫管理表を作成することもできます。また、自分で作れなかったとしても、ネットに無料で配布されているテンプレートをダウンロードするという手段もあります。

ただし、Excelでの管理には限界があります。Excelでの管理の場合、システムで管理するような入出庫のトレーサビリティは困難です。また、保有できるデータ数もシステムに比べると少なく、処理スピードも遅くなることが多いでしょう。基本的にExcelで在庫管理するのは難しいといえるでしょう。

4-2. 在庫管理システム

在庫管理のためには在庫管理に適したシステムを利用することをおすすめします。もちろん、Excelや紙で管理するよりは費用が発生しますが、より効率的で適切な管理を実現することができます。

具体的には、倉庫への入出庫や製品の出荷など在庫状況をリアルタイムで見える化することができます。さらに、在庫を生産管理システムと連携することで生産管理システム側で製品や材料の余剰や不足を監視し、アラートをあげることも可能です。

一方で、システム導入というと高額な費用が発生するのではないかと心配になる人もいるでしょう。しかし、安価な製品や月額で費用を支払うクラウドサービスも多く登場しており、必ずしも多額の導入費用が必要となるわけではありません。適正な在庫管理と生産管理を実現するためにシステムの利用も検討してみるとよいでしょう。

5. まとめ

在庫管理においては、適正在庫や在庫状況を明確にした上で、過不足がある場合には調整を図ることが重要です。

一方で、多くの企業では適正在庫さえ明確に把握していないことも珍しくありません。そのような会社では、まずは、過去の推移からおおよその適正在庫を把握し、在庫状況を見える化するところから始めるとよいでしょう。適正在庫や在庫状況がわかれば過不足を調整することができるようになります。また、適正在庫が間違えていれば、フィードバックをし、適正在庫の精度を改善することができるようになります。

このような正のサイクルが回り始めれば、徐々に在庫管理精度は改善していくでしょう。

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