製造業におけるBOM管理の重要性

多くの製造業は、製品のオプションやバリエーションの増加に対処するため、製品を製造する際に必要な部品や原材料などの構成情報を部品管理しています。部品構成管理はBOM(Bill of Materials)管理と呼ばれ、部品中心のアプローチで BOM を管理することで、製品の構想段階から製造、設置、フィールドサービスに至るまで、情報共有を実現することができます。
旧来、多くの製造業ではBOM(部品表)をEXCELなどの簡易ツールで管理運用するケースが散見されましたが、多品種少量生産の製造形態が多くなった昨今では、手動での部品構成管理がますます困難であり、システム化が必要不可欠となっております。

1.部品構成管理(BOM管理)の流れ

製造に必要となるBOMは最初に設計部門で作成され、設計が確定された段階で生産部門に引き渡されて、モノづくりに必要な情報の肉付けを行います。生産部門では引渡されたBOMに工程情報やリードタイム情報などを追加して生産管理に必要な形に編集し、受注や生産計画に使用します。同様に、購買部門でもBOM情報に基づき、手配先や手配単価を決定して部品や原材料の調達を行います。近年では納品後の製品サービス、保守メンテナンスや販売支援にもBOMが利用されており、複数の部門を組織縦断的に移動しながら様々な場面で活用される、製造業にとって心臓部ともいえる大変重要な情報となっています。

2. 用途別BOMの種類

BOMには、いくつかの種類があります。用途によって、BOMは概ね以下のように分類されます。

■E-BOM(設計部品表)

開発・設計段階での部品構成情報をE-BOM(設計BOM)と言います。部品構成情報に併せて部品やモジュールの仕様、設計情報(図面データ)、技術情報などが表示され、部品やモジュールの詳細情報を提供します。CAD、PDM(製品データ管理)やPLM(製品ライフサイクル管理)などのシステムと組み合わせて管理、運用されるケースが多いです。

■M-BOM(製造部品表)

製造する際に必要な部品をリストで表示します。製造(内作・外作 等)に必要な部品・資材情報と工程情報(加工・組立 等)や工程順序情報を表し、生産スケジューリングや生産指示、工程管理、部品や材用調達に活用します。

■S-BOM(販売部品表)

販売支援で使用される販売部品表です。販売支援システムと連携します。

■購買BOM

購買部門で使用する部品表です。発注業務に必要な購入単位数量や仕入先ごとの購入価格リスト、代替品の情報など、見積・発注作業に必要な情報を管理します。

■サービスBOM

製品サービスや保守メンテナンスに利用します。メンテナンスに必要な部品をリスト化し、リストをもとにメンテナンスした実績を時系列にBOMに反映させ、管理を行います。

3. 登録方法別BOMの種類

BOMの種類は使用部門や目的によって異なりますが、登録の仕方(データ構造)によって、ストラクチャ型とサマリ型で管理されます。

■ストラクチャ型BOM

ストラクチャ型BOMは、製品が完成するまでの情報を中間工程を含めた階層構造で管理し、構造型とも呼ばれます。部品構成情報に工程情報や工程順序も保持し、予定工数や製造リードタイムの計算を行います。膨大な数の中間工程がある場合ストラクチャ型が有効で、生産管理でMRPを使用する場合には、ストラクチャ型BOMが必須になります。

■サマリ型BOM

サマリ型BOMは、ストラクチャ型BOMのような階層構造に対して、製造に必要な部品や原材料を一覧形式(フラット階層)でリスト化した部品表です。仕様変更、追加に柔軟に対応できる管理方法です。試作品や一品モノなど設計と並行して(仕様変更や追加が多い)生産が進むような形態に適したBOM管理といえ、必要な部品の総数がわかりやすく、部品調達に向いています。
多くのケースで、E-BOMはサマリ型BOMで運用され、それが調達や生産段階でストラクチャ型のM-BOMや調達BOMに編成され運用されていきます。

4.今注目を集める「BOM管理システム」とは?

旧来、BOMは紙やエクセルなどで管理されるケースが殆どで、誤入力や二重入力の発生、類似品検索ができないなど多くの問題がありました。また、誤記により共通品の矛盾などが生じることも多発し、間接工数の増大に繋がっていました。
こうしたBOM管理の諸問題を解決し間接工数の削減を実現するのが、部品管理システム(BOM管理システム)です。BOM管理システムは専用システムとして提供されることもありますが、ERPとしての生産管理や購買管理の一部機能として含まれることもあります。
BOM管理システムを運用することで、個々の部品の調達先や価格、使用する数量や加工方法、タイミング等を特定し、納期を正確に判断しながら過不足を見える化できるので部品調達効率を大幅にアップすることができます。

CAD、や文書(図面)管理システム、生産管理システム、資材購買システムと連携して、一気通貫した統合製品情報管理の実現を通じた業務効率化も可能です。

以下、幾つかのBOM管理システムの製品URLを記載いたしました。
部品管理を効率化するためにBOMシステムを導入しようか迷っているという方は、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。

図研プリサイト visualBOM

https://www.presight.co.jp/product/visualBom.php

日本システムウエア Base-Right

https://www.nsw.co.jp/solution/detail.html/?ssid=base-right

PLM Japan PLM console

https://plm.plmj.jp/

富士通 PLEMIAグローバルエディション

https://plm-biz.feast.fujitsu.com/solution/global-edition.html

5. まとめ

今後、企業が生き残るためには、自社の企業戦略や製造形態に適したBOM管理が行える仕組みを運用する必要があります。そのためには、従来の分断されたBOM管理ではなく、BOMを企業全体で有効活用することが重要です。

BOMをデジタル化することで、多品種少量化、短寿命化により複雑化する製品をより効率的に管理することが可能になります。これにより、製造業における設計部門、製造部門、サービス部門に対して組織横断的な製品の中核となる情報を提供できます。結果として、正確な製品構成情報の共有は企業に大きな価値をもたらすことになります。

海外生産や海外市場への販売展開を行う製造業ではサプライチェーンが海外まで広がっており、グループ全体での部品管理のあり方についても検討が必要です。本稿をきっかけに、BOMの在り方についてご検討頂く一助になれば幸いです。

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