MES(製造実行システム)とはなにか?

デジタル対応の遅れに伴う属人化や多品種少量生産への対応など、日本のものづくりは今、待ったなしの変革が求められています。こうした中で注目を集めているのがMES(エムイーエス:Manufacturing Execution System)製造実行システムです。 生産管理システムからみると、MESは工程管理に近い位置付けになります。 特徴としては、工場の生産ラインの各製造工程と連携できることや作業手順管理、入荷・出荷管理、品質管理、保守管理など11の機能を状況に応じて利用することができます。

1. 生産管理システムとの違い

一見して分かりづらいMESと生産管理システムの違いですが、対象範囲や管理層など、詳しく解説してゆきます。

1-1.生産管理システムとは

生産管理システムとは、受注や内示情報から納期に対応できる生産計画を立案し、材料や購入部品の手配と協力工場や現場への購入・製造指示を行い、受入や製造の実績を投入しながら在庫を計上しつつ出荷までのプロセスを管理するシステムです。   
対象とする業務範囲が広く、品質や原価などの製造プロセスにまで及びます。   
また、生産する製品の作り方から、機械、電気、電子などの「組立製造」と、製造プラントなどに原材料を逐次投入して生産する「プロセス型製造」の2つの製造タイプに対して適切なシステムが提供されています。

1-2.MESと生産管理システムの業務範囲

MESと生産管理システムの両者の一番大きな違いが業務範囲です。工程管理と呼ばれる製造現場に近い製造オペレーションの情報管理を行うのが「MES」なのに対し、生産管理システムは製造プロセスに関わる業務を幅広く管理することができます。   
管理範囲が重なるのでMESと生産管理システムは同義と取られることもありますが、MESは製造実行システムと呼ばれるように、工場の設備や原材料、仕掛品などの数量や状態などをリアルタイムに把握し、生産計画に基づいて作業のスケジュールを組み立てたり、作業者へ指示を出したり、作業手順に関する情報を収集管理するなど、より製造現場に近い情報を得ることができます。   
昨今注目されている「見える化」の実現を検討するのであれば、MESの導入が有効です。  

2. MESと生産管理システムの管理層

普及が進むERPでも生産管理を実行する事ができますが、MESの機能を包含する事ができるタイプとできないタイプがあります。ERPとMESの違いを理解するために、その管理層につい て解説します。

2-1.MESと生産管理システムの管理層

製造業の管理レイヤには計画層、実行層、制御層の3つがあります。計画層には販売管理・会計・生産管理・購買管理・人事管理があり、制御層にはPLCやDCSがあります。 この計画層と制御層の両者を結ぶのが実行層のMESの11機能になります。

2-2.MESの業務範囲

MESは実行向けのシステムです。工場設備や原材料、仕掛品の数量や状態をリアルタイムに把握し、生産計画(大日程計画)に基づいて作業スケジュール(小日程計画)を立案したり、作業者指示や作業手順に関する情報を提供します。
MESは作業スケジュール(小日程計画)を立案しますが、生産計画(大日程計画)の立案は行いません。生産計画(大日程計画)はERPの業務範囲になります。   
冒頭にも述べましたがMESは実行向けのシステムですので、製造現場が業務範囲となります。製造実績の記録を迅速に行えるようにハンディーターミナルやQR/バーコードリーダー、タブレットやタッチパネル、ICタグ、RFIDなどの機器を活用して入力の負荷を軽減します。

3.MESの11の機能

MESA Internationalが定義しているMESには11の機能があり、製造する製品によって内容が大きく異なるため、標準機能というよりは、データを分類する機能区分のような仕組みになっています。具体的な機能を解説します。

3-1. 生産資源の配分と監視 Resource Allocation & Status

生産資源の監視・管理、資源の配分と予約、資材や設備の監視・管理などを行います。なおここでの生産資源とは人・機械・治具・金型などで、それがないと製造ができず材料と違い製造後にも残留して他の仕事に使えるものをいいます。

3-2. 作業のスケジューリング Operations/Detailed Scheduling

生産計画に基づいて、詳細なスケジュールを立案します。勤務シフトの対応も含まれます。小日程計画立案スケジューラの機能です。

3-3.差立て・製造指示 Dispatching Production Units

差立て(ディスパッチ)、製造指示の発行、ロット(現品)管理、現場作業員に対する作業のガイダンスを行います。工程内仕掛量の調整機能を提供する製品もあります。製造指示書の発行と差立ては、中堅以上の工場ではIT化されているケースが多いです。

3-4.仕様・文書管理 Document Control

仕様・工場モデルの設定・管理(BOM、SOPを含む)、製造記録の管理、ペーパーレス・オペレーションなどを行います。作業指示書、レシピ(配合表)、図面、作業手順書、設計変更などの蓄積や編集機能を提供します。

3-5.データ収集 Data Collection Acquisition

各工程内の進捗状況をリアルタイムに収集します。作業の着手と完了時に、指示書のQRやバーコードをスキャンして、どこの誰が何をいつやったか、リアルタイムに収集する仕組みなどがあります。他方、自動収集はもちろん、スマートデバイスによる手動収集にも対応します。「データ収集」(Data Aquisition)と英語で言う場合は、制御系のDCS/PLCなどからタイムスタンプ付きデータを、リアルタイムに自動的に転送してくる仕組みをいいます。

3-6.作業者管理 Labor Management

作業者管理・セキュリティ管理などを行い、作業者状況を監視する機能です。最適な作業割り当てを決めることもできます。

3-7.製品品質管理 Quality Management

収集された測定データをリアルタイムで分析し、適正な品質管理を行います。統計的品質管理、品質情報の蓄積と管理、品質分析・解析の支援、顧客サービスの向上などに活用します。

3-8.プロセス管理(工程品質管理) Process Management

生産状況を監視し、作業者の意思決定を支援します。通常のプロセス制御、高度なプロセス制御(工程間制御、フィードフォワード、モデル予測制御など)、例外状況のアラートなどを行います。

3-9.設備の保守・保全管理 Maintenance Management

装置や工具の可用性を確保し、定期保全・予防保全のスケジュールを確定します。 この部分だけに特化したCMMS(Computerized Maintenance Management System)というパッケージのソフトウェアも存在します。

3-10.製品の追跡と製品体系の管理 Product Tracking & Genealogy

仕掛品の追跡と次の作業(後工程)を把握する機能です。

3-11.実績分析 Performance Analysis

過去の履歴や計画と比較してレポート作成、分析作業支援、進捗管理、出荷予測を行います。

4.お勧めデータ収集・M2Mソリューション

工場設備の情報をリアルタイムに収集し、現場の”今”を記録するソリューション資料をご用意させていただきました。
新旧・メーカーを問わない設備対応が可能。お客様が知りたい情報を収集し、観察・分析・仮説・実行・検証のサイクルをサポートいたします。

5.まとめ

製造業の強さとは、徹底したコスト管理と生産現場の効率化による生産性の向上だと言えます。このうち、生産性を高めるためには、ヒト・設備・時間と言った限られた生産資源を、状況に合わせて最適化する仕組みをつくることが重要です。経済のグローバル化の進展とともに、生産の現場では少量多品種の生産やリードタイムの短縮が求められるようになっており、MESの必要性も高まっています。原料の管理やスケジューリング、生産プロセスの管理を行えるMESで、工場の効率化を目指しましょう。

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