クラウドかオンプレミスか?~生産管理システムの 特徴・ メリット・デメリットを解説~

生産管理業務のシステム化は、精緻な需給調整や納期回答の早期化など、複数のメリットをもたらします。さらに近年では、クラウド型生産管理システムが登場し、導入・維持コストの削減も可能になりました。ただし、モノづくりの中核を担うシステムだけに、安さだけを追求するべきではありません。カスタマイズ性やセキュリティの高さなどは、時に安さよりも重視すべきポイントです。ここでは、クラウド型、オンプレミス型双方の特徴やメリット、デメリットについて解説します。

1.クラウド型生産管理システムの特徴・メリット・デメリット

まず、クラウド型生産管理システムについて解説します。昨今のクラウドブームに乗り、かつてはクラウドに適さないと言われたシステムにまで、その波が押し寄せています。生産管理システムも、クラウド化の潮流に乗ったシステムのひとつと言えるでしょう。

1-1.クラウド型生産管理システムの概要

いわゆるクラウドサービスとして提供される生産管理システムです。インターネット経由でベンダーが用意したサーバへ接続し、サーバにインストールされた生産管理システムを利用します。また、ユーザー数に応じた従量制課金や月額課金モデルが主流になっています。

1-2.クラウド型生産管理システムのメリット


イニシャルコスト、ランニングコストが小さい

クラウド型生産管理システムは、サーバやネットワーク機器などのハードウェア調達費用が無いため、イニシャルコストが小さくなります。同時に、ランニングコスト(システムの利用料)も、オンプレミス型に比べると小さくなる傾向にあります。ただし、ランニン グコストについてはケースバイケースです。必ずしもクラウド型のほうが安いとは言い切れません。

バージョンアップ対応が不要

オンプレミス型の場合、ソフトウェアやミドルウェアなどのバージョンアップ対応は、自社で行わなくてはなりません。生産管理システム自体のバージョンアップはベンダーが行ったとしても、サーバやネットワーク機器への対応は自社で行うことがほとんどでしょう。クラウド型では、そもそもサーバやネットワーク機器を保有しないため、こういった手間が不要です。


IT人材が不要

オンプレミス型のシステムとは異なり、システムに関する作業は全てベンダーが行います 。ユーザーが行うのは、ソフトウェアの設定や管理のみで、高度なITスキルは必要ない場合がほとんどです。IT関連企業以外では、社内にIT人材が存在しない企業がまだまだ存在 しています。また、いわゆる「ひとり情シス(社内の情報システム担当者がひとりしかい ない)」な企業も珍しくありません。クラウド型では、これらITに対応する人的リソース を持たない企業でも、スムーズに利用できる点がメリットです。

1-3.クラウド型生産管理システムのデメリット

一見、万能に見えるクラウド型生産管理システムにも、デメリットがあります。それは、次のような点です。


セキュリティリスク

クラウド型では、ベンダーが保有するインフラ、情報資産を利用します。そのため、オンプレミス型に比べるとセキュリティリスクがコントロールしにくいのです。もちろん、昨今ではセキュリティに力を入れているベンダーが大半を占めます。しかしセキュリティ自体の高低よりも、自社でコントロールできるか否か、といった点が問題になりがちです。

他システム連携やカスタマイズに制限がある

クラウド型生産管理システムは、ベンダーが定めるプランから、自社の業務要件に最も近 いものを選ぶ方式です。もちろん、オプションやカスタマイズによって、一定の柔軟性は確保できるでしょう。しかし、業務プロセスを全く変えずにクラウドへ移行するのは難しいかもしれません。

2.オンプレミス型生産管理システムの特徴・メリット・デメリット

次に、オンプレミス型生産管理システムについて解説します。
こちらはクラウド登場以前 の、いわゆる「自社保有型」です。

2-1. オンプレミス型生産管理システムの概要

自社保有のサーバ内に生産管理システムを導入し、運用します。自社内にサーバ・ネットワークを構築したり、ハウジングサービス(ベンダーが保有するデータセンターなどに自社サーバを預け、運用・保守を委託できるサービス)を利用したりと、いくつかのパターンがあります。しかし、どのパターンでも「ハードウェア資産が自社のもの」という点では同じです。

2-2.オンプレミス型生産管理システムのメリット


連携、カスタマイズに強い

既に社内で運用している他システムとの連携は、オンプレミス型に軍配が上がるでしょう 。全く制約が無いわけではありませんが、既存システムとの連携仕様や設定項目をゼロベースから作り上げられるのは、オンプレミス型ならではと言えそうです。

業務プロセスに与える影響が小さい

上記理由から、システム側を業務に極限まで摺り寄せることで、業務プロセス変更の手間が小さくなります。

インターネットの影響を受けない

オンプレミス型の多くは、社内ネットワークのみで完結します。万が一インターネット上で何らかの障害が起こっても、その影響を受けることはほとんど無いでしょう。

セキュリティリスクをコントロールしやすい

自社内保有の場合、手間やコストがかかるものの、セキュリティリスクをコントロールし やすくなるでしょう。

豊富な導入・稼働実績を持つ製品が多い

導入・稼働実績という意味では、オンプレミス型の実績が勝ることが殆どではないでしょうか。これは、単純に歴史の長さがモノを言っているのでしょう。しかし、安定性や確実性、可用性が重視される業務システムにおいて、実績は無視できない要素です。

2-3.オンプレミス型生産管理システムのデメリット


イニシャルコスト、ランニングコストが大きい

クラウド型とは異なり、サーバやネットワーク機器などを調達しなくてはならないため、イニシャルコストが嵩みがちです。

保守、運用、障害対応のコストがかかる

サーバ、ネットワーク機器を常時監視し、必要に応じて設定変更や障害対応を行うためのリソースが必要です。これらを完全に外注したとしても、その費用がかかります。

将来を見越した投資額の設定が難しい

オンプレミス型では、数年後の事業拡大や設備変更などを想定し、システムへの投資額を 決定します。しかし、「必要十分かつ無駄のない投資額」の想定はなかなか難しいもの。余裕を持たせすぎればハードウェア資産が無駄になり、足りなければスケーラビリティを確保できません。この点においては、クラウド型に一歩劣ると言えそうです。

3.必ずしもクラウドが最適解ではない

ここ数年で、クラウド型のメリットを目にする機会が増えました。しかし、どちらが優れているかは、ケースバイケースです。

3-1 .オンプレミス型生産管理システムが勝っている点


・オンプレミス型のカスタマイズ、連携に対する強さは、モノ作りの複雑かつ精緻な業務にマッチする。

・長年培ったノウハウを守るため、自社でセキュリティリスクをコントロール必要がある。

・既存システムの改修コストが小さくて済むため、トータルコストで考えると大差が無い場合もある。

・システムを使用するユーザーの数によってはクラウド型のランニングコストが高くなる可能性もある。(クラウド型がユーザー数に応じた従量課金制の場合)

・オンプレミス型の多くは、社内ネットワークのみで完結する。そのため、インターネット上の障害が社内の処理遅延などに繋がりにくい。

一般的には、クラウド型のコストパフォーマンスに目を奪われがちでしょう。しかし、すべての企業にクラウド型生産管理システムが最適解とは言い切れません。ケースバイケ-スですので、しっかり比較検討して選定することが大切です。

4.まとめ

この記事では、生産管理システムをクラウド型とオンプレミス型をさまざまな観点から比 較し、解説しました。昨今のクラウド化の流れから、クラウド型生産管理システムが増えています。ただし、クラウド型が、すべての企業にメリットをもたらすわけではありません。カスタマイズ性やセキュリティの高さ、既存システムとの連携、インターネットに依存しない安定した稼働などを考慮すれば、オンプレミス型を選ぶという選択肢も見えてくるでしょう。生産管理業務のシステム化では、これらオンプレミス型のメリットも考慮してみてください。

メニュー