製造業における「購買管理」の重要性

購買管理とは『生産活動に当たって、 企業における購買業務を適切に管理する』ことです。モノづくりの一環として、
「必要な資材を」
「必要なタイミングに」
「必要な量だけ」
「安定的に」
「できる限り高品質に」
「できる限り安価に」
「必要な部門に確実に届けて」
「必要な部門で確実に使われる」
これらのプロセスを滞りなく流れるようにする仕組みづくりに他なりません。

1.購買管理の5原則

購買管理業務を進める上で「購買管理の5原則」と呼ばれる守るべき基本原則があります。目的は以下の内容です。

1-1. 適切な取引先を選ぶ

購買業務では、安定した仕入れができることが重要となります。サプライヤー都合で納品が滞ったり、品物や数量が間違っていたりすれば、生産計画に大きな影響がでるため、適切なサプライヤーの選定が重要です。

1-2. 適正な品質を確認し確保する

納期通りに納品しても、品質が価格に見合っていないこともあります。品質が不十分であれば顧客への信頼に関わるため、一定のレベルをクリアした品質の確保が必要です。資材の品質が悪ければ是正勧告などをして対策する必要があります。

1-3. 適正な数量を決定・確認し確保する

購買業務では、必要な数が足りていないと業務に影響が出て、購入しすぎても在庫過多となり無駄が生じます。予算管理や在庫管理にはコストがかかりま す。常に適切な量の資材を確保することが重要です。

1-4. 的確な納期を設定し指示し確保する

購買業務において納期設定を誤ると、予定通りに計画が進まなくなります。計画に遅れが生じないように納期を設定し、それが守られることが重要です。計画遵守の徹底にはサプライヤーとの協力体制も重要となります。納期が遅れがちであれば、部員を派遣して改善活動を支援するなどして納期を遵守してもらうことも必要となります。また、トラブルに対応できる体制構築も必要です。

1-5. 適正な価格を決定し購入する

購買業務において仕入価格は会社の利益に影響する重要な要素です。資材を安く購入することで営業利益を高めることができるため、原価低減活動は重要な 業務のひとつとなります。しかし安く購入することを重視しすぎた結果品質が損なわれるようなことはあってはなりません。品質を維持して可能なかぎり安く仕入れコストダウンを図っていくことが重要です。

購買の5原則を認知しただけではそれを活用できません。なぜなら、購買の5原則は原則に過ぎず遵守すべきルールではないからです。しかし、強い問題意識があれば、自社にとって最適な購買方法や管理方法を生み出せる可能性があります。 企業活動の中でも重要な役割を担う購買業務は、金銭が絡むことから不正が起きやすい部門だともされています。内部統制を行い不正が起きないようにするためには、購買管理規定が重要となります。購買管理規定は主に不正を防止するために制定されますが、業務効率化を推進する目的としても重要です。

2.購買業務の基本フロー

企業によって多少異なりますが、基本的な購買業務は「取引先の選定」「見積依頼」「価格・納期の比較」「発注」「納期管理」「入荷・検収・検査」「出荷」「支払い」といった業務フローが発生します。それぞれの内容を簡単にご説明します。

購買業務の基本フローについて

  1. 取引先の選定
    最適な取引先を決め、業務の依頼を行います。
  2. 見積依頼
    見積依頼をかけ、価格の妥当性を判断します。
  3. 価格・納期の比較
    見積価格や納期を比較し、最終的にどの取引先と取り引きするか決定します。
  4. 発注
    購買内容を確定し、契約を締結します。
  5. 納期管理
    納期確認や、遅延が生じた場合の対応などを行います。
  6. 入荷・検収・検査
    納品物や数量が合っているか、 欠品や品質に問題ないかどうかなどをチェックします。
  7. 出荷
    必要な品物を必要な時に必要な数量、生産現場へ届けます。
  8. 支払い
    支払いを経理部門へ依頼します。

3.購買管理をスムーズに行うための3つのポイント

3-1. 職務分掌の確立

職務分掌の本質は職務を適切に配分し、担当者ごとの担当業務と責任の所在をはっきりさせることです。購買業務に置換えると、発注業務と検収業務がそれぞれ独立した職務であり、分掌することが大切です。これらの業務を1人の担当者が兼任すると、サプライヤーに発注して納品された資材が適切かどうかを確認する検収も同じ人が行うことになり、サプライヤーとの癒着が発生しうる不正のしやすい環境となります。

3-2. 購買業務の標準化

購買業務の実態として「各現場が個別に購買業務を行っており、他部門から誰が何を購入しているのか分からない」「取引先毎に割振られた購買担当が独自のやり方で仕入れているので、担当者がいない日は業務がストップする」ということはないでしょうか。購買方法がバラバラで属人的に行われていると、情報の共有や引継ぎなどが大変になります。購買基準を社内で統一し、業務が標準化されていれば、誰が担当しても円滑な購買業務の遂行が期待できます。

3-3. システム化を前提とした購買データの一元管理と見える化

購買業務を通じて得られた購買データは企業の財産ですから、活用しない手はありません。蓄積された購買データを共有し、業務の流れやプロセス、リアルタイムの状況などを可視化(見える化)できれば、問題発生時にすぐ対応でき、解決できる環境が整います。また、データ分析を行う事で業務改善に繋げる事も可能です。チェックフローや承認フローを設定し、発注書や納品書、検収報告書などを照合するフローを設け、不正があっても第三者が発見できる体制を作ることも大切です。ここで重要なのが実現するための方法です。いくら業務の方 法を工夫しても、人的作業では会社の規模によっては限界があります。これらのポイントを実現するために「システム化」が必要になります。

4.まとめ

購買管理が滞りなく行われることで、スムーズな生産、コスト削減に取り組むことが可能になります。ただし、ただ単に購買管理をしているからといって油断はできません。常日頃から情報を共有し、ウォッチし、購買管理を適切に行うことが重要です。そのために本コラムを紹介させて頂きました。企業の収益力をアップさせるためにも、ぜひ購買管理の強化・改善を推進・継続していきましょう。

メニュー