自動車部品製造業における「トレーサビリティシステム」とは?

国内のニュースでも大きく取り上げられる自動車のリコール問題。対象となる部品によっては人命に影響するため速やかな回収が重要、且つ必須となっています。
完成車1台を製造するためには数万点ものパーツが必要と言われますが、各車体の個体管理をどのように実現してトレース管理に活用するのかが重要になっています。

1.トレーサビリティシステムに求められる要件は?

材料や購入部品がどこから仕入れられどこに委託加工されたのか、またどのように社内組立されたのか等を特定するために、製造元や流通経路、委託先などの各地点において、「いつ、どこで、誰が、どうやって、何をしたのか」が記録され、履歴として確認できるよう保管されていなければいけません。

2.トレーサビリティシステムを実現する要素は?

材料の仕入や部品の支給/受入、社内工程の生産実績などトレースを記録するポイントで活用される手段としてQR/バーコード付きラベルや現品票があります。
ラベル発行プリンタやレーザープリンタによって印刷し、現物とともに移動します。
対象となる部品によってはラベルではなくレーザマーカによって刻印することもあります。 これらQRやバーコードの情報をハンディターミナルやタブレットでスキャンし、付加情報を追加して入力の軽減をはかりながら実績をシステムに記録してゆきます。

3.トレーサビリティシステム運用のポイントは?

トレーサビリティシステムを運用するうえで重要なポイントは大きく2つあります。

3-1. どんなものを製造しているか

対象となる製造物の大きさや量、形状によってラベルか、現品票か、刻印等の方法を決定します。
ラベルを貼るスペースがないケースやロットサイズが大きい場合などは現品票が有効になります。
また、製造数量が少なく金属製でサイズが大きいものなどはレーザマーカが有効です。

3-2. どんな環境で製造しているか

記録をとる場所がどんな環境かでスキャンする機器を決定します。
オイルや粉塵などで入力環境がハードなケースや屋外で雨などの天候条件に左右されるケースなどでハンディターミナルが有効です。
反対に室温等が一定で比較的清潔な室内の場合はタブレットが有効です。

4.トレーサビリティシステム導入のメリットは?

トレーサビリティの確立に必要な「いつ、どこで、誰が、どうやって、何をしたのか」などの情報をシステム上で一元管理することで、
 • 責任の明確化(問題発生の際の原因の特定など)
 • 蓄積したデータベースから業務改善や生産管理、品質管理の検討が可能
 • 取引先への信頼
 • ブランドの向上(他社製品との差別化)
 • 法令遵守の証明
などが可能になります。
社内管理向けのみならず、出荷先への提出データとして利用することも可能です。

5.まとめ

自動車産業を取り巻く世界は常に変化しています。
グローバル社会において密接に関連した経済、激烈な競争や新興市場により、生産目標、サプライヤ、長期戦略を常にウォッチしなければなりません。
トレーサビリティを確立することで、ブランドの向上や消費者・取引先の信頼獲得も期待できます。
モノ自体の価値だけでなく、製造元や品質保証などが重要視される現代では、どの業界においても導入するメリットが大きいシステムです。
トレーサビリティがなぜ重要なのか、自動車製造の様々な工程でどのようにトレーサビリティが実施されているのかご参考頂ければ幸いです。

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