生産管理における設計変更の理由とタイミング

生産管理部門において、設計変更は業務負荷を高めるとして取り沙汰されることが珍しくありません。しかし、「受注生産」や「オーダーメイド(個別製造)」が主流となる現場では、顧客満足度や品質向上を支える重要な手続きでもあります。したがって、設計変更を「防止する」ことよりも、「スムーズに対応できるスキーム作り」に注力すべきかもしれません。ここでは、設計変更に対応できるスキーム作りのヒントとして、「設計変更が発生する理由」や「タイミング」「設計変更を支えるシステム」を紹介します。

1.設計変更の理由とは?

設計変更が発生する理由は、大きく「問題解決型」と「課題解決型」に分類できます。

1-1.問題解決型の設計変更

製品不具合の解消

単純なミスによる設計不具合や、設計段階の検討不足・先送りなどが原因で起こった不具合の解消が目的です。具体的には、寸法ミスや干渉チェックの漏れ、強度不足や変形、構造上の不具合による振動や発熱の問題などが該当します。このような製品不具合は、1か所を修正すると芋づる式に他の不具合が発生することも少なくありません。そのため、設計変更によって早急に根源的な問題を特定・修正することが重要です。

顧客・消費者からのクレーム対応

顧客や消費者から、同じ内容のクレームが多数寄せられており、コミュニケーションで解決できない場合には、設計変更で対応する必要があります。クレームには、表面化していない様々な不具合、性能不足に対する不満などが含まれるため、品質改善を図るチャンスでもあります。

図面や部品表の不具合

図面や部品表の不具合は、部品発注時の確認作業に手間取る、在庫数と発注数の整合が取れないといった「無駄」の温床となります。

問題解決型の設計変更は、企業の対外的な信用力の低下を防ぐという効果があります。近年、「貯信時代」という言葉が流行しているように、現代のビジネス環境を勝ち抜くためには、「信用の蓄積」が重要です。長い歴史と豊富な実績を持つ企業が、インターネット上で発生する「風評」によって、一気に信用を落とす例も珍しくありません。問題解決型の設計変更への対応は、信用力の低下を防ぎ、既存顧客・消費者との繋がりを強化できるでしょう。

1-2.課題解決型の設計変更

VE

VE(Value Engineering:価値工学)は、「ある製品やサービスを提供する際、その価値が最小のコストで最大化されるように調整する組織的活動」といえます。VEでは「バリュー(価値)=機能/コスト」として定義されるため、価値を上げるためには、「機能の向上」か「コスト低減」が必要です。
具体的には、顧客が求める機能、顧客が必要としていない機能(過剰機能)、未実装であるが顧客が求めている機能(不足機能)の3点を洗い出し、実装と削除を繰り返しながら、製品を洗練していきます。
さらに、複数のアイディア・代替案を取りまとめて最終的なVE案とし、設計変更へと落とし込んでいきます。また、これらは総費用(ライフサイクルコスト)が最小になるように進めることも重要です。

顧客からの改善要求

顧客からの改善要求は、VOC(Voice of Customer)と言い換えることもできます。つまり、「顧客と自社の認識の違い(ギャップ)」や「市場の変化や競合他社の活動」が含まれているわけです。VOCに基づいた設計変更は、競争力の高い製品の開発に繋がるでしょう。

その他

部品や原材料に危険物質が含まれる場合や、サプライヤーからの改善提案も、設計変更で対応することが多いでしょう。

課題対応型の設計変更は、「製品寿命」や「販売数量」の調整に効果があります。例えば、旧世代の製品に適切なタイミングで機能を追加すれば、製品寿命を延ばすことが可能です。
また、製品の世代交代を見越して、旧世代の製品に付与する予定だった機能を次世代の製品に搭載する、といった方法も考えられます。

2.設計変更が発生するタイミング(時期)

次に、設計変更が発生するタイミングについて解説します。設計変更は、主に以下のようなタイミングで発生すると言えるでしょう。

2-1.即時変更

欠陥部品や危険部位による仕様変更など、特に「安全性」が重視される場合。

2-2.在庫消化後

既存の設計を採用した在庫を消化したタイミングでの設計変更。

2-3.日付指定

開始時期と終了時期を明確に区切り、期間限定で設計変更を適用する。

2-4.製品番号指定(一連番号指定)

日付指定とは対照的に、製品ごとに管理される番号で設計変更の対象を決定する。

どのタイミングであっても、設計変更による影響範囲、受注残や在庫状況を考慮しつつ、「費用の最小化」を意識した変更が求められます。しかし、即時変更のように緊急性を要する設計変更では、生産管理部門・設計部門・製造部門などの連携がうまくいかず、設計変更のコストが嵩んでしまう可能性もあります
こういった設計変更時の連携不備を防止するには、ITシステムの活用がおすすめです。

3.設計変更を支えるシステムとその効果

これまで紹介したように、設計変更にはさまざまな理由があり、タイミングも一定ではありません。そのため、柔軟かつ的確に設計変更を管理・遂行するための仕組みを確立しておく必要があります。下記は、設計変更を支えるITシステムの具体例です。

3-1.ERPシステム

企業内の様々な資源(ヒト、モノ、カネ、情報など)を一元管理し、どこにどの程度、どういう形で配分されているかを把握することで、素早い経営判断をサポートするためのソリューションです。「在庫・購買管理」「生産計画」「製造管理」「資材調達管理」など、業務ごとに分類されたモジュール間において、業務プロセスに合わせたデータの保持・更新が可能です。部品表(BOM)の共有や半自動的な更新など、設計変更に欠かせない機能も内包しています。
また、多様な生産モデル(個別受注生産、見込み受注生産、見込み生産)や管理方式(かんばん方式、製番管理方式、MRP方式など)に対応していることも強みです。

参考:GLOVIA smart PRONES(https://www.iosi.co.jp/product-solution/businesssystem/glovia)

3-2.PLMシステム

PLMシステムは、企画・設計・生産・販売・販売・メンテナンス・廃棄といった、一般的な工業製品のライフサイクルを管理する仕組みです。PLMシステムの活用で、設計変更で発生する変化点と影響範囲の共有、先行作業への影響度などをリアルタイムに確認できます。そのため、設計変更情報は製造コストの削減や長寿命な製品の開発にも役立つでしょう。ちなみに、生産管理システムのなかには、PLMシステムの機能を内包するものもあります。

参考:TECH-S(https://www.techs-s.com/product )

4.まとめ

本稿では、設計変更の理由とタイミング、設計変更を支えるシステムについて解説しました。スムーズかつ的確な設計変更は、柔軟性とスピードが重視される現代のビジネス環境において、企業の付加価値を高める施策です。設計変更のプロセスを見直すとともに、それを支えるシステムの導入も検討してみてはいかがでしょうか。

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