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はじめに
クラウドソリューション導入が進む中、企業にとって最大のリスクは「認証・アクセス管理」です。近年のランサムウェア攻撃や不正アクセスは、多くの場合、脆弱な認証や管理者アカウントの不適切な管理を起点に発生しています。
そのため、従来の個別サービス単位の対策ではなく、認証・セキュリティを全体的に強化する仕組み化が必要です。特にランサムウェア対策として、クラウド認証の強化を検討する企業が増えています。

この記事では、以下の点について理解できます:
- なぜクラウド認証が狙われるのか
- 認証・アクセス管理がランサムウェア対策につながる理由
- MFA/SSO/ZTNAの役割
- クラウド認証強化製品の選び方と比較
1. なぜクラウド認証強化が今必要なのか
1-1.クラウド共通のセキュリティ課題
クラウドサービスの利用が拡大する中で、企業は複数のSaaSを導入し、それぞれのアカウントを管理する必要があります。この結果、以下のような課題が生じます:
- SaaSの乱立によるアカウント増加:利用サービスごとにID・パスワードが増え、管理が複雑化
- 権限管理の属人化:誰がどの情報にアクセスできるかが担当者に依存
- 管理者アカウントの集中:少数の管理者アカウントに権限が集中し、リスクが高まる
1-2.ランサムウェアの侵入口は「認証」
攻撃者は認証情報を突破口にして侵入することが多く、以下の方法でクラウドサービスにアクセスします:
- フィッシングによるID窃取
- パスワード使い回しによる複数サービス侵入
- MFA(多要素認証)未導入アカウントの突破
このため、認証そのものを強化することが、ランサムウェア対策の第一歩です。
2. 従来の認証・アクセス管理の落とし穴
2-1.ID・パスワード認証は危険?
従来のクラウド認証は、IDとパスワードの組み合わせが中心です。しかし、情報漏洩を前提に攻撃が行われる現状では、単純なパスワード認証は危険です。特に、複数クラウドサービス間で同一パスワードを使い回すことが常態化している企業は要注意です。
2-2.VPNやネットワーク依存型の問題
従来のVPNによるアクセス制御も課題があります。
- 認証後のアクセス範囲が広すぎ、不要なサービスまでアクセス可能
- クラウドサービス単位でのきめ細かい制御ができない
- VPNだけでは、ランサムウェアや内部脅威対策として十分ではない

3. ゼロトラスト時代の認証・セキュリティ強化の考え方
前章で見てきたように、従来のVPNやネットワーク依存型のアクセス制御では、認証後にアクセスできる範囲が広すぎたり、クラウドサービス単位で細かく制御できなかったりと、ランサムウェアや不正アクセスのリスクを十分に抑えられません。
こうした課題を解決するために登場したのが、ゼロトラストの考え方です。ゼロトラストでは、ネットワークの内外にかかわらず、すべてのアクセスを都度検証します。信頼の起点はネットワークではなくユーザーIDであり、アクセスの可否は認証情報だけでなく、コンテキスト情報を組み合わせて判断します:
- ユーザーの属性
- 利用端末
- アクセスする場所・時間
- 振る舞い(行動パターン)
これにより、不審なアクセスや権限濫用を未然に防止できます。
4. クラウド認証強化の主要技術と役割

ここまでで、クラウド環境における最大のリスクが「認証」にあること、そして従来のID・パスワードやVPN中心の対策では、ランサムウェアや不正アクセスを十分に防げないことを見てきました。ゼロトラストを実現するためには、認証基盤とアクセス制御を役割分担させて組み合わせることが不可欠となります。
4-1.MFA(多要素認証):本人確認の強度を高める
MFA(多要素認証)はID・パスワードに加えて、スマートフォンによる承認やワンタイムパスワードなど複数の認証要素を組み合わせることで、認証情報が漏洩した場合でも不正ログインを防止できます。
ランサムウェア攻撃の多くは、フィッシングなどによるID・パスワード窃取から始まるため、MFAの導入は侵入口そのものを塞ぐ対策として非常に有効です。
4-2.SSO(シングルサインオン):認証・管理の起点を一元化する
SSO(シングルサインオン)は、複数のクラウドサービスに対して一度の認証でアクセスできる仕組みです。利便性向上だけでなく、認証強化の中核となる基盤として重要な役割を担います。
ゼロトラストにおいては、「誰がログインしたのか」を正確に把握する必要があり、SSOを導入することで管理が行えます。
- 認証を一元管理
- ユーザー・権限・ログの管理を集約
- MFAの適用管理を統一
4-3.ZTNA(認証結果を活用したアクセス制御)
ZTNA(Zero Trust Network Access)は、SSOやMFAによる認証結果を前提に、クラウドアプリケーションや社内リソースへのアクセス範囲を最小権限で制御する仕組みです。
従来のVPNでは、一度接続されると広範なネットワークへのアクセスが許可されていましたが、ZTNAでは以下のような制御が可能です。
- クラウドアプリ単位・機能単位でのアクセス許可
- ユーザー属性や端末状態を考慮した制御
- 不要なネットワークアクセスの遮断
これにより、認証後であっても、権限の濫用や横展開を防止できます。
ZTNAは「認証そのもの」ではなく、認証結果を活用してアクセスを制御する実装レイヤーであり、ゼロトラストを現場で成立させるための重要な要素です。
認証強化はMFA+SSO+ZTNAの組み合わせで実現します。
5. 認証・セキュリティ強化がランサムウェア対策になる理由
ランサムウェア対策というと、EDRやEPP、バックアップを強化する方法もありますが、感染を前提とした対策になりがちです。近年の攻撃では、最初の侵入口が「VPN装置等の認証情報の悪用」であるケースが大半を占めています。
つまり、ランサムウェア対策は「感染後の対処」だけでなく、
攻撃の各フェーズで認証・アクセス管理がどのように機能するかを理解することが重要です。
5-1.侵入口の遮断:不正ログインを防ぐ
攻撃の第一段階は、正規ユーザーを装った不正ログインです。
フィッシングやパスワード漏洩により、攻撃者はクラウドサービスへの認証突破を狙います。
ここで有効なのが MFA(多要素認証) です。
- ID・パスワードが漏洩してもログインできない
- 海外・異常端末からのアクセスを検知・ブロック
- 管理者アカウントの乗っ取りリスクを低減
MFAは、ランサムウェアの最初の侵入口を塞ぐ役割を果たします。
5-2.権限悪用の防止:アクセス範囲を最小化する
仮に正規ユーザーとして認証されてしまった場合でも、被害を拡大させないことが重要です。
ここで機能するのが、SSOとZTNAを組み合わせたアクセス制御です。
- SSOにより、ユーザー・権限・アクセス状況を一元管理
- ZTNAにより、業務に必要なアプリ・機能だけを許可
- 不要なクラウドサービスや管理画面へのアクセスを遮断
これにより、攻撃者が内部に侵入しても、横展開や権限昇格を行いにくい環境を作ることができます
5-3.被害拡大の抑止:横展開・内部侵害を防ぐ
ランサムウェア攻撃では、一つのアカウント侵害を足掛かりに、
- 他のシステムへの不正アクセス
- 管理者権限の奪取
- データの大量窃取・暗号化
といった横展開が行われます。
ZTNAでは、ネットワーク単位での接続を許可しないため、
- 認証されたユーザーでも全体ネットワークには接続できない
- クラウドアプリごとにアクセス可否を制御
- 被害範囲を限定できる
といった効果があり、攻撃の連鎖を途中で断ち切ることが可能です。
5-4.早期検知と対応:ログと可視化による抑止効果
認証・アクセス管理を一元化することで、不審な兆候を早期に検知できる環境が整います。
- SSOによるログイン履歴の集約
- MFA失敗・異常認証の検知
- 通常と異なるアクセスパターンの把握
これらの情報は、インシデントの早期対応だけでなく、「侵入されにくい」「発覚しやすい」環境を作る抑止効果にもつながります。
ランサムウェア対策というと感染後の復旧に目が向きがちですが、実際には、認証・アクセス管理を強化することで、攻撃そのものを成立しにくくすることができます。
- MFAで侵入口を塞ぎ
- SSOで認証と権限を可視化し
- ZTNAで被害範囲を最小化する
6. クラウド認証強化製品の分類と選び方
クラウド認証・アクセス管理を強化しようとすると、IdP、MFA、ZTNA、SASEなど多くの製品・サービスが候補に挙がります。しかし、製品名だけを比較しても、何が必要かは判断しづらいのが実情です。
重要なのは、「どの技術を、どの役割として導入するのか」を整理することです。ここでは、クラウド認証強化製品を役割ごとに分類し、選定のポイントを解説します。
6-1.認証基盤(IdP / SSO / MFA系)
役割
- ユーザー認証の起点
- ID・権限・ログの一元管理
- MFAによる本人確認の強化
主な機能
- SSO(シングルサインオン)
- MFA(多要素認証)
- ユーザー・グループ管理
- SaaS連携(SAML / OAuth / OIDC)
検討・導入のポイント
- SaaS利用が増え、ID管理が煩雑になっている
- 管理者アカウントを含め、認証強度を底上げしたい
- まずはクラウド認証の土台を整えたい
6-2.アクセス制御(ZTNA系)
役割
- 認証結果に基づく最小権限アクセス
- VPNに代わるリモートアクセス制御
- 横展開・内部侵害の抑止
主な機能
- クラウドアプリ・社内システム単位のアクセス制御
- ユーザー属性・端末状態を考慮した制御
- ネットワーク非公開化(アプリの不可視化)
検討・導入のポイント
- VPN経由のアクセス範囲が広すぎる
- クラウドとオンプレミスが混在している
- 認証後のアクセス制御まで含めて強化したい
6-3.統合型(SASE / SSE)
役割
- 認証・アクセス制御・通信セキュリティの統合
- ゼロトラストを包括的に実装
主な機能
- IdP連携
- ZTNA
- SWG(Secure Web Gateway)
- CASB など
検討・導入のポイント
- 拠点・テレワーク・クラウド利用が広範囲
- 複数製品の運用負荷を下げたい
- セキュリティを将来的に統合したい
6-4.製品選定の考え方
検討・導入の選定ポイント
- 認証基盤(SSO/MFA)が整理されているか
- 何を守りたいのか(SaaS / 管理画面 / 社内システム)
- VPNを置き換えたいのか、併用するのか
- 運用できる人・体制があるか
いきなり「全部入り」を導入すると、失敗につながりがちです。
- 設計が複雑になる
- 運用が回らない
- 結果的に形骸化する
そのため、多くの企業では以下のような段階的導入が現実的です。
- SSO+MFAで認証基盤を整備
- 重要なシステムからZTNAを適用
- 必要に応じてSASE/SSEへ拡張
このように、役割を理解したうえで技術を組み合わせることが、クラウド認証強化とランサムウェア対策を成功させる鍵となります。
7. クラウド認証強化製品の比較と導入チェックリスト
段階的な導入や目的に即した導入を計画にするにあたり、必要となる検討リストを紹介します。
- 認証強化がランサムウェア対策の前提であること
- 技術(MFA / SSO / ZTNA / SASE)の役割分担
- 製品は「役割」で選ぶべきであること
クラウド認証強化製品のタイプ別比較表
| 項目 | 認証基盤型(IdP / SSO / MFA) | ZTNA型 | 統合型(SASE / SSE) |
| 主な役割 | 認証・ID管理の中核 | 認証後のアクセス制御 | 認証+通信セキュリティ統合 |
| MFA | ◎ | △(IdP連携が前提) | ◎ |
| SSO | ◎ | △ | ◎ |
| アクセス制御粒度 | △(アプリ単位までが多い) | ◎(最小権限) | ◎ |
| VPN代替 | × | ◎ | ◎ |
| 横展開対策 | △ | ◎ | ◎ |
| 導入難易度 | 低 | 中 | 高 |
| 運用負荷 | 低 | 中 | 高 |
| スモールスタート | ◎ | ○ | △ |
| 向いている企業 | SaaS管理を整理したい | VPN課題を解消したい | 全体統合を目指す |
8.クラウド認証強化を実現する代表的な製品例【MFA/SSO/ZTNA】
本章では、前章までに解説したMFA・SSO・ZTNAによるクラウド認証強化を具体的な製品に当てはめて紹介します。
■HENNGE One クラウド認証基盤(SSO・MFA)で実現するランサムウェア対策
製品サイト:https://hennge.com/jp/service/one/
HENNGE One は、クラウドサービス利用時の認証を一元管理するクラウド型認証基盤(IDaaS) です。
SSO(シングルサインオン)とMFA(多要素認証)を中核機能として提供し、複数のSaaSへのログインを安全かつ効率的に管理できます。
ID・パスワード漏洩やフィッシングを起点とした不正ログインを防止できるため、ランサムウェア対策における 「侵入口対策」 として有効です。
また、管理者アカウントを含めた認証強化やログの可視化により、ゼロトラストにおける 認証の起点 を構築できます。
主な特徴・メリット
- SSOによる認証の一元化
- MFAによる不正ログイン防止
- 多数のクラウドサービスと連携可能
- 認証ログの集中管理による可視化
こんな企業におすすめ
- SaaS利用が増え、ID管理が煩雑になっている企業
- まずはクラウド認証強化から始めたい企業
- 中小〜中堅企業で、運用負荷を抑えたい企業
■Fortinet ZTNA ゼロトラストアクセスによる認証後の被害拡大防止
製品サイト:https://www.fortinet.com/jp/solutions/enterprise-midsize-business/network-access/application-access
Fortinet ZTNAは、Fortinetが提供する ゼロトラストネットワークアクセス(ZTNA)ソリューション です。
SSOやMFAなどの認証結果を前提に、クラウドアプリケーションや社内システムへのアクセスをアプリケーション単位で最小権限制御 します。
従来のVPNのようにネットワーク全体への接続を許可するのではなく、「誰が・どの端末で・どのアプリにアクセスするか」を継続的に検証するため、認証後の権限濫用や横展開を防止できます。
これは、ランサムウェア対策における「侵入後の被害拡大防止」 を担う重要な役割です。
主な特徴・メリット
- ゼロトラストに基づくアプリ単位のアクセス制御
- VPNに代わるセキュアなリモートアクセス
- 認証後もユーザー・端末状態を継続的に検証
- 横展開・内部侵害の抑止
こんな企業におすすめ
- VPNのセキュリティや運用に課題がある
- クラウドとオンプレミスが混在している
- 認証後のアクセス制御まで含めて強化したい
このように、HENNGE Oneによる認証強化(SSO・MFA) とFortinet ZTNAによるアクセス制御 を組み合わせることで、クラウド環境における 実践的なゼロトラストセキュリティ を段階的に実現できます。
最後に、社内だけで解決が難しい場面では、ツールや専門家・ベンダーを上手に活用することで、対応スピードと運用品質が大きく変わります。
9.よくある質問(FAQ)
Q1. クラウドでも認証強化は本当に必要ですか?
必要です。
クラウドはネットワーク境界で守れず、認証情報そのものが侵入口になりやすいためです。
Q2. MFAだけでランサムウェア対策として十分ですか?
十分ではありません。
MFAは侵入防止に有効ですが、SSOやZTNAと組み合わせないと被害拡大を防げません。
Q3. 認証・アクセス管理はランサムウェア対策としてどこまで有効ですか?
侵入防止と被害拡大の抑制に有効です。
不正ログインや横展開を防ぎ、被害を小さく抑えられます。
Q4. 中小企業でも導入できますか?
可能です。
クラウド型サービスなら小規模・段階的に導入できます。
まとめ
クラウドソリューションの利用が進む中、企業にとって最大のリスクは「認証」にあります。従来のID・パスワードやVPNだけでは、ランサムウェアや不正アクセスに十分に対応することはできません。
そのため、クラウドソリューションの認証・セキュリティ強化は、ランサムウェア対策の中核として不可欠です。認証やアクセス管理を強化することで、不正アクセスの防止、権限の適正化、ログ監視による早期検知まで、包括的なセキュリティ対策が可能です。 クラウド認証・セキュリティ強化の導入は、一度にすべてを整える必要はありません。ゼロトラストを軸に段階的に導入することで、現実的かつ効果的なクラウド環境の防御策を実現できます。