自動車関連製造業における「計画変更」への対応方法

自動車関連製造業において、Tier1・Tier2・材料提供ベンダー、どの立場か、製造品が何か、それらに関わらず納期、数量の変更は必ず発生します。これは寸分違わない需要予測が実現されない限り逃れられない事実で、永遠に続く課題です。
そこでこの記事では頻発する計画変更に、システムとして実装すべき機能や運用方法をご紹介いたします。

1.見込生産型製造業における計画変更

多くの自動車部品製造業で見込生産方式が採用されています。
ボディメーカー、Tier1、Tier2からのフォーキャスト情報(内示)から在庫を引当て、製販会議等で自社の基準計画を立案し、生産部品表を展開して社内工程、外注加工、購買指示を出しています。
生産管理システム導入のプレコンサルにおいて必ずと言っていいほど課題にあがるのが、この基準計画立案後の突発的な数量、納期の変更で、システムとしていかに対応すれば良いのかという事です。

1-1. 求められるシステム機能

  1. ネットチェンジ型MRP
    所要量計算時に基準計画の変更部分のみ再計算する機能です。確定されている社内工程や外注加工、購買指示を除く所要を再計算します。
  2. 組立可能在庫照会機能
    突発的なオーダー数量・納期を入力し、下位の部品や材料の在庫が足りるか、足らなければいつなら間に合うかをシュミレーションする機能です。
  3. 生産計画自動立案機能
    フォーキャスト情報や確定受注情報から基準計画情報を自動で生成する機能です。
  4. スケジューラー機能
    所要量計算の結果をガントチャート化し、負荷を調整しながら工程計画を立案します。

1-2. 変更に強いシステム運用

生産品や工程の特性にもよりますが、多くの自動車部品製造業には中間仕込み品が存在します。材料入荷や自社工程のリードタイムが長く手配から入庫までに時間がかかる場合、この中間ストックをうまく使って突発的なオーダーに対応するケースが多くあります。
システムの運用においても自社完成品と中間仕込み品を部品表に実装し、リードタイムの長い中間仕込み品はフォーキャスト情報から、自社完成品は確定受注から基準計画を各々立案し所要量計算をすることで変更に強いシステム運用を実現することができます。

2.受注生産型製造業における計画変更

製造ラインや現場設備の設計・製造を生業としている製造業は受注生産方式で運用しています。
営業が獲得した案件の見積情報と設計部門の起こした設計部品表から生産部品表を作成し、所要量を計算して社内工程や外注加工、購買指示を出します。ここで必ず問題になるのが、設計変更にともなう工程計画の変更と手配変更です。 獲得した案件の設計図面が五月雨式に出図され生産部品表へ展開されるなか、一部ユニット品に過去受注の構成品が含まれる場合などは過去作成した当該ユニット部品表が参照されます。
ところが過去受注からの時間の経過が長い場合など、構成部品が廃番になっているケースがあります。このような場合、設計変更と手配及び工程計画の変更が発生します。
受注生産方式おいて課題にあがるのが、この設計変更にシステムとしていかに対応すれば良いかという事です。
また、廃番品が上位品に共通で構成されている場合、同様に変更が発生します。このほか、設置テストでの不具合改修も同様です。

2-1.求められるシステム機能

  1. 多階層型部品表
    サマリー型(一階層型)部品表ではなくユニット品や共通品を管理し易い多階層型の部品表運用が有効になります。
  2. 純展開、逆展開部品表参照機能
    指定した品目から下位、上位どちらへも展開参照する機能が有効になります。廃番品がどの製品に使われているか等を瞬時に把握できます。
  3. 有効期限情報付品目情報
    予め廃番の日付がわかっている場合、登録しておく事によって廃番予定日以降は新規品番で展開が可能になります。
  4. 設変影響手配検索機能
    設計変更によって影響のでる手配を検索する機能です。
  5. 設変在庫引当機能
    設計変更によって新規品に切り替わるが、在庫があるうちは旧品番で手配を引き当てたい場合に有効な機能です。

2-2.見える化を活用したシステム運用

受注生産型の現場工程は外作品の入庫状況や設変による購買部品変更など、予測が難しい不確定要素が多々ある事で、頻繁に工程計画の変更が求められます。希望納期の設定運用で回答納期を出来る限りリアルタイムにシステムへ反映させ、スケジューラに実装されたガントチャート等で負荷や実績を見える化することによってシュミレーションできる環境を実現し、変更に対応します。

3.計画変更に対応するポイント

計画変更は常に起こり得ます。根本的な解決は、取引先との間で受発注要件を設定し、直前での変更がない状況を作り出すことです。しかし、そうは言っても競合他社との競争力や、業界の慣習などもあってすぐに受発注要件の設定などはできずに、直前の計画変更に対応せざるを得ないというケースが殆どでしょう。 計画変更によるイレギュラー処理がメインの業務となってしまっている担当者は、まず初めに、その変更箇所、変更頻度、変更数量などの詳細データをつかんでみると良いと思います。

4.まとめ

様々なデータソースを活用したマーケティング手法が飛躍的に向上した現代においても、モノづくりにおける計画変更はなくなりません。この事実に対応してゆくことは製造業の宿命 です。
これまでは、個人に蓄積されている勘や経験で設定されている在庫で対応してきたのが実状ではないでしょうか。
この勘や経験を排除し、日々積み重なってゆく出荷実績のデータを観察、分析することで、基準在庫の精度を上げ設定運用することで変更に伴うイレギュラー処理を軽減できます。
計画変更への対応は企業の付加価値を高める施策に繋がります。プロセスを見直すとともに、それを支えるシステムの導入も検討してみてはいかがでしょうか。

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